日本の介護の歴史
時代と共に変化する介護
歴史というと、何百年、何千年を思い浮かべるかもしれませんが、日本の介護の歴史は、実は80年にも満たない近代史で、今の介護施設の利用者の親の世代が生きた時代です。ここでは、その介護の歴史の流れを、簡単にご紹介します。
明治~戦前
明治の頃までは「口減らし」「姥捨て山」などの言葉が使われる時代でしたが、次第に豊かになった日本で、親の面倒を子どもが見ることが当たり前になっていきました。
日本で最初の老人ホームは、キリストの隣人愛の考えから1895年に東京の港区で始まった「聖ヒルダ養老院」だと言われています。当時は、衰弱・疾病・貧困などによって生活ができない人を保護する施設として、女性の高齢者のみが入所できる施設でした。
戦後の福祉整備
終戦を迎えた日本は、失業、食糧不足、住宅難、孤児や身体障害などが課題となり「生活保護法(旧)」が作られ、さらに「児童福祉法」「身体障害者福祉法」と、いわゆる「福祉三法」といわれる、福祉の基礎となる法律が出来ました。
1950年に設置された「養老施設」は、入所する人の殆どが貧困で生活保護が必要とされる高齢者で、社会的弱者への救済措置でした。
高度経済成長期には、教育問題、高齢化問題、核家族化問題、公害問題など様々な問題があがり、それぞれに対応する法律がどんどんつくられました。1963年の老人福祉法では、養老施設が「特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」へ細分化されました。
福祉の拡大と縮小
潤沢な税収により、高齢化対策も含めて、福祉は拡大していきました。70才以上の医療費無料化や、高額医療費制度の創設、年金額の引き上げなどの施策が行われ、1973年を「福祉元年」と呼びます。
ところが、1979年の第二次オイルショックを機に、経済は低成長時代に入り、さらにわずか20数年で高齢化社会から高齢社会へと移行し、福祉の縮小・調整期へと突入しました。
ゴールドプラン、新ゴールドプラン、ゴールドプラン21と、施設福祉から在宅福祉へと数値目標を掲げながら進められ、2000年の介護保険法の制定に至ります。介護保険法では、国民全てが保険料を負担することになりました。
2005年には予防重視型のシステムへと転換、2008年には法令順守などの業務管理体制の整備が義務づけられ、2011年には地域包括ケアシステムの構築が始まりました。その後も、数年ごとに見直し、改正が行われています。