糖尿病への理解を深めよう
誤解の多い「糖尿病」
仕事をしていると、同僚や利用者、その家族など、多くの人と関わりを持ちます。普段親しくしていても、なかなか全てを話し、共有・理解することは難しいことです。しかし、把握していないことを突然知った時、自分の誤解から相手を傷つけてしまったり、間違えた対応を行ってしまったりということも、可能性がないとはいえません。ここでは、そんな誤解を生みやすい、糖尿病についてご紹介をします。
糖尿病の種類
大きくは、次のように分類できます。
- 1型糖尿病
- 2型糖尿病
- その他
- 妊娠糖尿病
日本の糖尿病患者の殆どは2型糖尿病で、いわゆる「生活習慣病」と呼ばれる病気です。
また、この分類以外にも、次のような分類もあります。
- IDDM
- NIDDM
これは、インスリン分泌と薬物療法の状況によって分けられています。
IDDMは、インスリンの分泌量が殆どなく、インスリン治療が継続的に必要とされている状況のことを指します。主に1型糖尿病の人はIDDMです。2型糖尿病でも、インスリン療法が必要とする人がいますが、インスリンの基礎分泌のある2型糖尿病の人は、IDDMにはなりません。
「甘いものを食べ過ぎて糖尿病になる」という誤解
2 型糖尿病患者の多くは、生活習慣が原因で発症すると言われていますが、遺伝性の病気でもあるため、わずかな生活習慣の乱れで発症する場合もあれば、全く発症しない人もいます。
一方で、1 型糖尿病の原因は生活習慣ではありませんし「甘いものを食べてはいけない」のではなく、むしろ低血糖を避けるために、糖を積極的に摂取しなければいけない時もあります。血糖値が下がりすぎると、最悪昏睡状態にもなりかねず、低血糖の応急処置としてジュースのがぶ飲みをする人もいます。学生の場合「お菓子を食べていてずるい」と学校で誤解を受けることもあるそうです。
「糖尿病患者は、中年の肥満の人」という誤解
2型糖尿病の場合、生活習慣が主な原因で発症する人の割合が多いため、やはり中年や肥満の人が多い傾向です。しかし、先述したように、遺伝が大きく影響している場合は、若い人ややせ型の人でも発症する場合があります。
1型糖尿病の患者に関しては、若年層に多いと言われています。発症原因は正確には解明されていませんが、ウイルスなどの侵入で働く自己免疫機能の暴走などが原因とも言われています。その為、年齢に関係なく発症しますし、インスリン分泌がなくなることで、糖をエネルギーに変えることができず、やせ細ってしまい、肥満どころかやせ型の人が多い傾向にあります。
インスリン治療がしやすい環境と理解が必要
インスリン注射は、血糖値の波がピークになるタイミングで薬が効くように、食事の前に打つ必要があります。しかし、注射から何分後なのか、どのくらいの量を投与する必要があるかは、薬剤の種類や食べる糖質の量によって違い、またそれぞれ個人差があります。ところが、この時間や量を間違えてしまうと、急激な低血糖で倒れてしまう恐れもあります。そのため、インスリン注射を必要とする人たちは、食品表示の糖質や炭水化物の量などを常にチェックしながら計算をしています。また、食事後のデザートも、血糖値を急激に上げる糖質の高いものは、食事途中の追加注射なしには食べられません。低糖質のものであれば食べられる人も多いようです。
その他にも、注射を打つ場所がなく、トイレで隠れてこっそり打つ人も多く、環境が十分に整っているとは言い難い状況です。その上さらに、誤解を持った人たちばかりだとどうでしょうか。外食はもちろん、好きな時に行きたいところへ行けない状況かもしれません。そういう人たちがいるということを知っておくだけでも、いざという時に役にたてるかもしれません。
糖尿病は「治る」「治らない」の問題ではなく、運動療法、食事療法、薬物療法など、様々なアプローチから一生コントロールし続けなければならない病気です。逆に、そのコントロールが上手くできていれば、インスリン治療をしながらでも、健康な人と同じように働くこともできます。ぜひ、少し知って、理解に努めてみてください。