褥瘡処置の昔と今
褥瘡に関する新しい考え方と処置
寝たきりの方に起きやすい褥瘡(じょくそう)ですが、正しい知識を持たずに介護をしていると、重症化する危険があります。しかし日頃の情報収集を怠っていると「正しい」と思っている知識がその真逆である可能性もあります。ここでは、その違いの大きな、褥瘡に関する処置の変化を簡単にご紹介します。
褥瘡は予防と治療の必要な病気
昔は「床ずれ」と呼ばれ、寝たきりの老衰の激しい方に発生し、治ることなく亡くなってしまうものだと思われていました。しかし、床ずれは、褥瘡という皮膚潰瘍の一つで、予防と治療が必要になります。けがのキズや熱傷よりも治りが遅く治療が難しいですが、早期発見と適切な治療で治るものも多いと言われています。また、何より予防が大切で、介護士としても多く関わる業務分野になります。
乾燥から湿潤へ変化した褥瘡処置
以前は、キズを乾燥させた方が早く治るといわれていて、ドライヤーで乾かし、消毒して、ガーゼをあててさらに乾燥させるという治療が一般的に行われていました。窓側でおしりを丸出しにさせて日光にあてていた、という施設もあったそうです。しかしその後、湿潤状態の方が早く治るというデータが出され始め、現在、基本の褥瘡処置は
- ①キズを洗う
- ②洗い残った水分を拭き取る
- ③外用薬を塗る
- ④キズよりも大きめのサイズで創傷被覆材を貼る
- ⑤ウレタンフィルムなどで創傷被覆材を固定する
という手順で、洗うことから始まります。(褥瘡の状態によって異なる)
粘弾性マットレスの使用
褥瘡予防・悪化予防として、以前は2時間ごとの体位交換が必要とされていましたが、粘弾性マットレスなど適切な用具を使うことで、2時間を4時間にすることができるようになるなど、介護士への負担が軽減されることで、より予防しやすくなりました。
円座クッションは禁忌
褥瘡患部の除圧のために、円座クッションが使われていたことがありました。穴の部分に患部を当てると、そこへの圧が一見周囲に分散されたように見えます。しかし、実際は周りに皮膚が引っ張られ、内部組織は骨と皮膚の間に挟まれ強く押しつぶされてしまいます。褥瘡ができやすい環境を作っているようなものなので、褥瘡に円座クッションは使わないことを覚えておきましょう。